レポート・現地情報

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岩手県大船渡市によるキャッシュ・フォー・ワーク(2)緊急雇用創出事業 /政府方針より早い、市による緊急雇用創出事業の活用

関西大学社会安全学部 永松伸吾

先日、大船渡市のCFW前編としてがれき撤去の事例をご紹介しましたが、他にも、かなり早い段階から、震災対応や復興に関連した雇用創出が行われていました。後編として、商工観光物産課の伊勢徳雄係長と武田貴子主任に伺った緊急雇用創出事業の事例をご紹介します。

震災前の応募者を、復興事業に雇用

 「緊急雇用創出事業」とは、平成20年に、世界同時不況で大量に発生した失業者の救済を目的として創出された制度です。平成23度末までの時限的な制度でしたが、今回の震災をうけて、政府の「日本はひとつ・しごとプロジェクト」において、この制度の対象に「震災対応分野」が加えられました。現在、多くの被災地で行われている、公的資金によるCFWは、政府のこうした方針を受けて実施されたものだと言えます。ただ、大船渡市では、政府の方針を待たずに、既存の制度を活用してCFWを実施しようとしていたようです。

 大船渡市では重点分野緊急雇用創出事業について、震災前の計画に基づき、2月から45名ほどの人材の募集を行っていました。100人以上の応募があったそうですが、それらの採用通知を出す前に震災が発生したのです。

 当時武田さんは地区本部に常駐し、避難所の世話をしていたのですが、上司から「こういうときは人出が大事、できる限り人を雇いなさい」とい指示を受けて本庁に呼び戻されたそうです。そこで取り組んだのが、新たな雇用事業の立ち上げです。震災前に応募があった人々に、市の災害対応に協力してもらうためにいくつかの事業を立ち上げました。そして「一から募集していては時間がない」(武田さん)と、震災前に募集した人々のうち、採用から漏れた方々全員に連絡し、希望する方をすべて採用することとしたそうです。

既存の制度に、ムリヤリねじ込む

政府が緊急雇用創出事業に「震災対応分野」を追加することとしたのは4月に入ってからの話です。当時は、震災対応は緊急雇用創出事業の対象には含められていませんでした。そこで「半ば無理やり『安全・安心』分野に『大船渡市復興事業』というのをねじ込んで(笑)」(武田さん)避難所のお世話とか、炊き出しなどに従事して頂いたそうです。

大船渡市役所

市窓口にてり災証明の受付を行う被災者(提供:大船渡市)

他の自治体からも手を借りて

 大船渡市では、9月時点で50事業171名の雇用を緊急雇用創出事業にて雇用しています。この中には震災前に企画された、震災とは直接関係のない事業も含まれていますが、いくつか具体的な事業を紹介すると、

  •  瓦礫中のアルバム、位牌などの回収・保管・返還を行う事業
  • 被災して移転した学校に通学する児童生徒の通学支援
  • 被害状況の確認調査・罹災証明申請受付・交付
  • 災害義援金の支払業務に係る補助及び関係書類の整理
  • 被災者等の健康管理などの保健活動

 とりわけ、大船渡市について特徴的なことは、応急仮設住宅のコミュニティ事業です。仮設団地におけるコミュニティ形成を支援する目的で60名ほどの雇用を創出することを企画していましたが、本ブログでもすでに紹介したように、この部分については、北上市が被災失業者の応援が得られることになり、事業からは外されました。9月1日時点で81名が雇用されており、雇用そのものは北上市から民間人材派遣会社に委託されています。社会福祉協議会の方でも生活支援相談員をしており、それらとの業務の重複などを避ける意味でも、関係者を含めたミーティングを月に2回程度実施しているとのことでした。

必要なのは就労につながる支援


 最近問題になっていることは意外にも「求人しても応募が少ないんですよ、緊急雇用に限らず、営業を再開した事業所からもそのような声が聞こえます」と伊勢さん。その原因は必ずしもはっきりしませんが、いろんな方の話を聞く限りでは、雇用保険をもらえる間は、元の事業所の再開を期待していつでも戻れる状態にしておきたいといった希望を持った方、自宅の片づけや整理に追われて仕事どころではない方、就業してしまうと、残りの雇用保険の受給期間が失われてしまうといった勘違いをしている方、一旦就業すると正規の雇用を得たときに再就職手当がもらえなくなることを敬遠する人、などなど、いろいろ考えられるということでした。

 ちょうど先日、雇用保険の特例給付が沿岸部で90日程度延長されましたが、「単に延長するのではなく、再就職手当を充実させるなど、就労につながる支援が必要ではないか」(武田さん)という指摘は、地域経済の復興に本当に必要な支援とは何か、大きな問題提起だと感じました。

雇用創出を阻む、意外な制約


 他方で、今後の災害時の雇用創出についての意見も伺いました。大船渡市として、これ以上緊急雇用を増やすことは難しいと言います。それは市庁舎に机を置くスペースがなかったり、会議室も足りず、駐車場も足りないなどの物理的な制約が大きいそうです。また、大船渡市には人材派遣会社が存在せず、採用や雇用事務を委託できる業者もない、ということもボトルネックの一つです。前述の北上市の支援事業は、そういった点でも大船渡市にとってはありがたい事業だと評価しておられました。大災害時のキャッシュ・フォー・ワークを考える上で、こうした点が制約になるということは重要な教訓として整理しておく必要があると感じます。



 

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