レポート・現地情報

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みちのく衛生の会 がれき消毒活動レポート
公衆衛生という視点から目指す、土地の再生。

一カ月弱でのスピード立ち上げ

「もともと公衆衛生を勉強していたので、最初は津波後の衛生や感染予防についての指導を行いたいと思っていました。でも実際に状況を見てしまうとねぇ…指導だけでは無力に感じてしまいましたね。とにかくやらないと、と」

そう語るのは、「みちのく衛生の会」代表の大川きょう子氏。東京で物資支援のボランティア活動をしたのち、一ノ関に移りこの団体を立ち上げた。陸前高田を中心に、瓦礫の消毒、トイレ清掃、買い物代行や病院送迎サービスを行っている。資金はすべて自己資産。一関市で事務所や車を借り、清掃道具をそろえ、知人の紹介やハローワークの求人から従業員を集めた。5月に陸前高田に視察に来てから、組織として動き出すまでわずか1カ月弱。「夏が来る前にはじめないと」。その一心だった。
 

「個人での緊急雇用だと思ってやっています」

代表の大川きょう子氏。
自らも作業服を着て、泥も気にせず消毒活動を行う。

初期費用は2千万円。ほとんどが車のリース代や事務所の賃料になった。清掃、消毒業務用のトラックに送迎バス、それに散布用の機械。さらにそこに従業員の人件費が加わるため、トータルの予算は8千万にも上るという。
 
「任意団体なので、個人で雇っています。資金が限られるので、最長でも来年の5月末までですね。緊急雇用的な感じで考えているんです。1年もすれば他の仕事が出てくるかと思いますし、今働いている従業員の中にもすでに前の職場の再建が決まっている人がいます。だから、これはつなぎ雇用ですね」
 
時給は岩手県の最低賃金644円を基準に650円に設定。リーダークラスの従業員には月給で支払うが、「これだけの仕事ができる人にこのお給料では」と、能力に合わせて昇給した例も。一関市で男性3名・女性3名、陸前高田市方面で男性8名・女性7名、計21名を雇用している。



「ハエが全滅する薬では、人も死んでしまうよ」

 ある程度の力が要りそうな散布作業だが、
「このあたりの人は農作業に慣れているせいか、
みなさん散布がお上手なんです」(大川氏)と。
 

 「みちのく衛生の会」の主業務のひとつである瓦礫の消毒作業は、おもに漁協や個人からの依頼を受けて行っている。業務はすべて無償。今のところ収益を得る仕組みにはなっていないが、沿岸地域での需要は極めて高く、あと2カ月ほどは新規の依頼を受けられないほど。彼らの消毒活動の特徴は、「Nザイム」と呼ばれる散布剤にある。乳酸菌と酵母、そして納豆菌からできた、天然成分の消毒剤だ。
 
「消毒をはじめるにあたって東京大学安全環境センターの山本和夫先生にご意見を伺ったら、『このハエが全滅するほどの薬を撒いたら、そのあとの土壌汚染を取り除く方が大変だ』と言われたんです。確かにペストコントロール協会などは防護服を着て散布を行っているので、有害ではありますよね。これは手を洗えるくらい安全なんです」
 
ハエを殺すほどの効果はないが、においを消すことで寄り付かせず、卵を産むなどの繁殖を防いでくれる。散布現場では、エタノールのようなツンとする刺激臭はまったくしない。化学薬品に比べて即効性があるとは言えないが、現場で作業を続けているとその違いがよくわかるそうだ。



「陸前高田を、「土から再生」させたい。

「誰か信頼できる方を」という大川氏に、知人を介して紹介
されたのが鈴木氏(手前)。「臭いが取れていくし、土壌の
再生にもつながる。やりがいがある」

 Nザイムは、何より人の住む場所に散布できるのが良い。「消臭剤です」というと、「そんなのがあるんですか?うちにも撒いてください!」とあちこちから声がかかると言う。さらに散布したNザイムは、土に染み込むと土壌改良作用が働き、土を甦らせる効果もある。
 
「ごちゃごちゃになってしまったところも、これをやってれば復活するんじゃないかと思うんです。土から再生していきたいっていう気持ちがあるんです」
 
この日、現場で消毒作業をしていたリーダー役の鈴木氏の言葉だ。

Nザイムによる消毒は一度で済むというものではなく、普通でも3回、この瓦礫の山レベルになると1,2カ月は継続的に散布する必要がある。けっして簡単な作業ではないが、「土からの再生」を望むその先には、数年後、数十年後への期待が込められていた。



女性が活躍できるしごと―「トイレ清掃活動」

「大きな投資が要らず、女性でもできる」トイレ掃除。
(写真はみちのく衛生の会WEBサイトより)

 もう一つの主業務に、トイレの清掃・消毒がある。初めは避難所のトイレ清掃から始まり、今は復旧作業現場などの仮設トイレを中心に行っている。11地区、合計200か所の仮設トイレを女性従業員9名で分担。1日で15,6か所も回るという。
 
震災後の雇用は、どうしても肉体労働や屋外作業に偏ってしまい、室内での安定したしごとは少なかった。そこで大川氏は、トイレの清掃業務を女性メインの業務とした。もともと年配の方が多い地域ということもあり、年齢層は40、50代の方が中心。若い人の応募もあったが、トイレ掃除と聞いて1日で辞めてしまった子もいれば、やると言って結局来なかった子もいた。実際、状況はとてもひどく、トイレのあまりに汚さに従業員たちが続けていけるか大川氏も心配していた。
 
「でも意外とみなさん、頑張ってやってくれて!掃除すると『ありがとう』って直接返ってくる、それがすごくやりがいになってるんですね。あと女性がやっているでしょう、そうすると作業現場の男性たちが手を止めて見に来るの! 作業着を着た40,50代のおばさんなのにね(笑)。それでありがとうって、クッキーやジュースをもらって帰ってくるんです。イキイキやっていますね、トイレ掃除でも人とのコミュニケーションが意外とあるんですよね」
 

半年経過、そして1年後。事業としての継続は―

市街地にはまだ瓦礫の残る建物や廃車がそのままにされている。
Nザイムは廃車から出る油による土壌汚染にも有効だそう。

先にも書いた通り、現在の活動はすべて大川氏の個人資産を財源としており、業務に対する収益はまったく見込んでいない。「誰もお金を払わないですよ、消臭には。利益がないので事業にするには難しいです」とこぼす大川氏だが、しかし市の緊急雇用基金と連携し、個人から行政の緊急雇用に切り替えることで、違う財源を確保できるかもしれない。
 
1年という活動の区切りは、正直もったいないという印象を受ける。需要という点から考えれば、公衆衛生へのニーズの高さは言うまでもない。消毒活動などは自治体が行っている場合もあるが、現状を見る限りでは不十分だろう。現にみちのく衛生の会が使っているNザイムは、実は岩手県から譲り受けたものだという。県で消毒剤を購入したものの、撒く人がおらず放置されたいたというのだ。1キロ当たり1万円で、譲り受けたのは400キロ。大川氏が手を挙げなければ、400万円相当の消毒剤が持ち腐れになっていたところだ。

沿岸部と内陸部との、“雇用の差”

秋の日差しを受け、穏やかに波打つ陸前高田の海。
沿岸部では、消毒を待つ漁網や瓦礫がまだまだたくさん残っている。

人材は現在ハローワークでの募集のみだが、これについては沿岸部と内陸部、そして被害の度合いによって差がみられるという。本部のある一ノ関では、募集を出せば翌日から電話が鳴りっぱなし。ところが陸前高田では1週間でようやく一人を採用できる程度。この差の原因として、大川氏は求人数とタイミングの2点を挙げた。

「こっち(陸前高田)では早い段階から建設会社さんが求人を出していて、その日給が1万5千円とか2万円とか…だから働く元気があればそっちに行きますよね。内陸部のほうがしごとの問題はあるのかもしれません。あとは今うちで働いている方は比較的被害が少なかった方なので、次のことをすぐに考えられたんだと思います。身内がなくなられたりすると後が大変ですし、避難所に入った方がハローワークを見ているのかなという感じでした。失業保険や給付金が出る間は休もうと考えているのかもしれないですね、だからその期間が終わったらまた応募があるかもしれません」

公衆衛生という視点から被災地貢献と雇用をつなげた「みちのく衛生の会」。震災から半年がたった今、財源確保を含め今後の活動に向けた変化が求められる時期かもしれない。  

 

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みちのく衛生の会
http://www.mtnkeisei.com
 

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