レポート・現地情報

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気仙沼復興協会(KRA)(前篇)
「つなぎ」の雇用を超えて、気仙沼のあしたをつくる。


気仙沼の雇用を担う、被災者自身による復興団体

 
私が訪問したのは気仙沼復興協会(KRA)。階上中学校に避難していた被災者が中心となって立ち上げた、雇用創出のための組織である。いろんな被災地をこれまで回ってきたが、雇用創出を目的として被災者自身で団体を立ち上げたというのは、他に例がない。気仙沼市から緊急雇用創出事業の一部を受託して、KRAは現在100人を超える被災者を雇用し、清掃業務や仮設住宅の支援業務、写真洗浄と返却業務など、さまざまな復興事業を実施している。
 
被災者の雇用にかかる様々な事務を担う事務局も、ほぼ全員が被災者だ。冒頭に紹介した小松朋子さんの自宅は津波で流失。現在は夫と仮設住宅で暮らしている。千葉貴弘さんは元ホテルマン。職場は津波の被害を受け、千葉さんは解雇された。

仮設店舗による屋台村。目の前が
フェリー乗り場で、辺りにはまだ津波の
爪痕が残る。

「それじゃ、先生。私の車でお送りしますよ。」そう言って車を運転するのは奥山雅彦さん。彼はこの事務所で唯一気仙沼市外から通う人間だ。彼の所属は一ノ関に拠点を置く人材派遣会社「インターワークス」。事務局機能を強化するために、5月に私たちが紹介した宮城県企業人材支援協同組合を通じ、応援として派遣されているスタッフである。奥山さんはいわば雇用のプロ。事務局の誰に聞いても、彼がいないとKRAは回らなかったと口をそろえる。

KARが行っていることは、復旧・復興のための活動を被災者のしごとにするということであり、典型的なキャッシュ・フォー・ワークである。ただ、KRAの取り組みが他とまったく異なるのは、それを被災者自身が企画・運営・管理して実施しているという点だ。しかもそれは決してマイナーな活動ではない。気仙沼市全体で、震災後の緊急雇用の実績はこれまでで660人。そのうち100人強がKRAで雇用されているのだ。


屋台村にて。前列左から、ボランティア
担当の三浦さん。事務局長の千葉さん。
右側が小松さん。後方左側が奥山さん、
右側が前川さん。

KRAを訪問する度に、生き生きとしたスタッフの笑顔に驚かされる。それはおそらく、単純に仕事があるということが理由ではない。自分たちが気仙沼の復興を支えているという自負から来るものだ。緊急雇用は来年度も延長されることが決まっている。このため、KRAの活動は来年度も継続される。

とはいえ、KRAが緊急雇用の受け皿団体として設立されたものである以上、緊急雇用が終了すればKRAも消滅する運命にある。残念ながら今のところKRAはそれ以上の意味を見いだせていない。


「つなぐ」しごとの、その先に―

 
しかし、ここまで成長したKRAを単なる「つなぎ」の組織としてしまうことは、正直あまりにももったいないと思う。KRAのスタッフと食事しながらの会話でも、結局話題はそこに収束していく。今は楽しく、誇りをもって仕事をしているが、この仕事が永続的なものではないことは、本人たちが一番自覚しているのだ。それゆえの不安や苦悩も、大きい。
 
途中で「写真救済プロジェクト」のリーダーの高井さんが合流した。彼は、前にも紹介したが、東京からイチゴ栽培を行うために気仙沼に移住した人物である。彼も早々にイチゴの栽培を再開させることを望んでいるのだろうと思いきや、彼から思わぬ言葉を聞いた。
 
「イチゴはいつでもできるからいいんですよ。でも、失われた思い出を回復する写真救済の仕事は今しかできない。私はイチゴの栽培よりも、今のこの仕事を優先させるつもりです。」
 
キャッシュ・フォー・ワークはあくまで「つなぎ」であるということは拙著でもさんざん指摘してきた。その立場からは、正直複雑な心境である。しかし、彼らが実際に取り組んでいるしごとは、彼らの雇用をつなぐために用意されたわけでは決してない。気仙沼の復興のために本当に必要なしごとなのだ。少なくとも、彼らはそう信じている。
 
ならば、とことんまでやってみたらいいと思う。緊急雇用をはじめ、復興のための財源を使って、本当に被災地の復興に必要なことは何か考え、悩み、工夫し、そしてその中には持続的なしごととして独立できるものが出てくるかもしれない。
 
もちろん、元の仕事に戻る人は出てくるだろうし、それは祝福すべきことだと思う。しかし、気仙沼の経済がもともと右肩上がりではなかったことを考えると、「つなぐ」という発想だけでは気仙沼の将来が厳しいことに変わりはない。今のKRAの活動が、緊急雇用の仕事から離陸することができれば、それは新たな雇用や産業が生まれたということだ。そのような発展の方向性を願ってやまないし、ぜひ応援したい。
そして、きっとKRAにはそれができると思う。小松さんが会の終わりにこう語った。
 
「先生、今回の震災で、本当にいろんな人が助けに来てくれたんだあ。気仙沼の狭い世界だけで考えちゃダメだってわかった。今になってもっと勉強したいと思うようになったよ。」

気仙沼復興協会事務所にて、9月撮影。

 

この活動への
ご協力はこちら

こちらの団体/活動への支援、ご協力、ご連絡は、下記より直接お問い合わせくださいますようお願いいたします。

一般社団法人 気仙沼復興協会(KRA)
http://kra988.jimdo.com/
プロジェクト名:緊急雇用創出事業
プロジェクト概要:
気仙沼市からの委託に基づき、がれき撤去、清掃業務、仮設住宅の支援、写真救済などの活動に被災失業者を雇用して実施している。
財源:公的資金
平均的な月収*:15万円未満
従事者数:51名以上
*「平均的な月収」は概算であり、実際に被災者が受け取る収入には幅があります。

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