レポート・現地情報

おしごと中、失礼します!

<久之浜公民館、漂流物管理>
思い出の品を持ち主に返したい。一枚の写真に願いを込めて、心の震災復興を目指す

―震災前、佐藤さんはどんな仕事をしていましたか

佐藤:
町の旅館が忙しいとき、接客をお手伝いする仕事をしていましたが、旅館が流されて仕事場がなくなってしまったんです。もともと私の家では親と同居していたのですが、地震の後、町にガソリンも病院もないので、みんなで宇都宮へ避難していました。自宅は一部損壊だったので今はそこに戻って何とか暮らしています。この仕事は7月19日から始めました。

―館長は震災後に赴任されたのでしょうか?

館長:
6月に公民館に赴任しました。当時は流された“漂流物”、“遺留品”とは呼びたくないので…、その漂流物が集められて講堂に置きっぱなしでした。虫がわいたり異臭を放ったりとひどかったんです。それで何とかしようと…。婦人会などの応援をいただきましたが何しろ多すぎて困っていました。それで、県の絆事業を活用して佐藤さんに来てもらうことにしたのです。



出征時の日の丸とたすき。
ご家族はこの品の存在自体をご存じだろうか。



―最初来たときはどんな感じでしたか

佐藤:写真などは海水をかぶって砂だらけでしたが、それでも顔が残っている写真とかを、筆でそっと砂を落として…。ぼろぼろなものも多かったです。特に遺影を探す方も多かったんです。でも、講堂に並べられているだけで、腰をかがめて探すこと自体大変でした。そんな時、館長がリストを作ることを考えてくださったんです。それと処理のマニュアルも作っていただきました。それでぐっと整理もはかどり、写真なども探しやすくなったんです。


―漂流物整理票というのを使うんですね

館長:
リストは整理票のナンバーで管理します。一つのグループの漂流物を一つのナンバーで、そうすると写真で自分のものが見つかれば他のものも一緒にできる。それとキーワードをつけておきます。写真の名前がわからなくても「七五三の服の女の子」とか。そのキーワードのつけ方が、佐藤さんがすごく上手で…。
佐藤:「氏名不詳」とかでは、そのリストを読み飛ばしてしまうんじゃないかと心配だったんです。だからできるだけ印象に残る言葉にしています。


整理票。A4サイズを半分に縮小してリスト化、
さらにA4に4枚縮小コピーしたものを仮設で見てもらう。


―きめ細かい仕事ですね

館長:
ここに来る方にも、ここまでよくやってくれたと感謝されます。それに佐藤さんはお手伝いのボランティアにもその心がけをうまく教えてくれています。リストを見ながら泣いている人がいたことをボランティアに伝えるとか。
こうしてできたリストは“ボランティアの思いを乗せて”仮設住宅に持っていって閲覧もしてもらっています。今までナンバーは2,200件を超えました。240万枚の写真や位牌、携帯、ランドセルとかです。
よくこんなきれいに、こつこつとやってくれて、と感心していただいて、今まで255人、462点は無事に帰りました。私たちはこの仕事を「心の震災復興」だと思っています。


―心の震災復興ですか

佐藤:
本当に欲しい写真があると、何回でも来る方がいます。パソコンでの管理も考えましたが、お年寄りには使いにくいし、個人情報の壁もあって、やはりこのリストが一番です。
館長:A4判の整理票に番号と名前やキーワードを記入して、展示室にはそれを半分に縮小したコピーを、さらに4分の1に縮小コピーしたものを仮設住宅で見てもらいます。リストがあるおかげで今は講堂に広げておかないで、2階の談話室に番号ごとに箱に入れて置いてあります。


展示スペース(談話室)前の廊下。リストのおかげで、
大量の品々も番号順にカゴや箱でコンパクトに整理できる。



 
―今までで印象深い思い出はありましたか

佐藤:この街には、柏餅で有名な梅月堂さんというお菓子屋さんがあるんですが、やはり津波ですべて流されて。ご主人も「何もなくなった」と言ってあきらめていたんですが、ここにきて写真を見つけて…。家がなくなった代わりに写真があった、とすごく喜んでくれました。今はすっかり元気が出て、もうすぐ新しいお店が開店するんです。町の人も楽しみにしています。
館長:ここは津波の後火災があり、それで焼失したところも多いです。賞状やアルバムが無くなった時の喪失感、無気力というんですか、それを回復してもらう。写真効果ですね。

―気持ちがこもりますね

佐藤:
子どもさんの写真が見つかって喜んで帰った方もいるんです。だから、ここに探しに来る人には何とかしてあげたい、という気持ちが強いです。あきらめないでくださいと。
館長:佐藤さんは、ここにおいでになる方には、お出迎えから送り出しまでする、ボランティアの人たちにもそういう心を意識付けてくれています。だからボランティアとの絆も強い。先日、除染体験教室をやった時は、50人ものボランティアが参加してくれました。「また来たい」と言って、ここに人が集まってくるんです。


残された写真群。七五三や結婚式、卒業アルバムなど、
まだたくさんの写真が持ち主を待っている。



―写真は大切なものなんですね

佐藤:私もアルバムを大切にするようになりました。今は2階にしまってあります。ふだんあまり見ないものですが、大事なんだと。
アルバムといえば、卒業アルバムを亡くした人が多いと聞いて、館長がパソコンで編集して、配ってくれたことがあって、とても好評でした。
館長:この町は小学校が2つと通学校が1つ、それを1冊にしたんで、便利だと喜ばれました。



館長自らパソコンで編集したアルバム。優しさと熱意が、
失った思い出を再生させるアイデアを生んだ。



―これからも展示を続けますか

佐藤:見に来れない人がまだいるので、こうしてずっと残しておきたいです。もうすぐ1年ですが、1年経ってやっと来れる人もいると思うので。津波の記憶が怖くて来れない、6号線のトンネルをくぐって町まで来れないという人もまだたくさんいますから。
館長:この町は小学校が2つと通学校が1つ、それを1冊にしたんで、便利だと喜ばれました。



漂流物の整理という「心の復興」、館長の優しさが滲む的確なアイデアと、それを深い思いやりで最高の仕上がりにまで高めた佐藤さんの見事な二人三脚。たくさんの思い出の品が、いつか必ず持ち主の手元に届くことを願って公民館を後にしました。

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