レポート・現地情報

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岩手県大槌町の「刺し子プロジェクト」
「私は刺し子に救われた」―大槌の女性たちのために―

女性たちが避難所でできるしごとが必要。

大槌の町の鳥「かもめ」を刺繍したコースター

そのように吉野さんが感じたのは、実際に避難所生活を体験されたから。「もともと東京でWEB制作の仕事をしていたんですが、今回の地震をきっかけに4月末で退職したんです。それで大槌の避難所に泊まり込んで、被災者のために何をするべきかということをずっと考えていました」。
吉野さんは地元が大槌でも、知り合いが大槌にいるというわけでもありません。震災直後にボランティアで訪れた被災地の状況に心を痛め、現職を辞めてまで被災者支援に従事することを決意されたそうです。

刺し子さんはあらかじめ下書きされた絵柄を
なぞるように刺繍していきます。

そして見えてきたのは、避難所生活の中では何もしない時間があまりにも長いということ。男性たちが瓦礫撤去などの作業で忙しい一方、肉体労働が厳しい女性たちは1日ほとんど動かないという方も多くいたそうです。これからの生活への不安を抱えながら、ただじっと時間が過ぎるのを待っている…。
吉野さんは、東京にいる4人の仲間にスカイプで避難所の現状を伝えて、自分たちが何をすべきかを話し合ったそうです。その中で出てきたひとつが、針と糸と布地さえあればできる「刺し子」でした。
 


初めは2、3人だった刺し子さんが今は90人に。

基本的には自宅で作業。週に1度だけ、
こうして集会所に刺し子さんが集います。

はじめて商品をつくりだしたのは6月7日。仲間5人で4万円ずつ出し合い、材料や商品を販売するWEBサイトを用意。刺し子さんは、吉野さんが避難所で一人ひとりに声をかけて集めたそうです。「サイトで商品が売れたので、チラシなどでも広く募集をかけて。はじめは2、3人だったんですが、今は90人以上いらっしゃいます」。一旦募集を締め切った今でも口コミで広まり、月に10人ほど増えているそうです。(2011年9月現在)。
避難所が解散した今は、基本的にはみなさん自宅で商品を作っています。集会所に集まって作業するのは週に1度。商品の検品や引き取りもこの場で行います。完成した商品はすべて買い取り。ノルマや期限もないので、みなさん自分のペースでされているようです。
平均収入は月1~3万円だそうですが、中には10万円を稼ぐ刺し子さんも。
「その方は震災で妹さんを亡くされ、何もしていないとどうしても涙が出ちゃうみたいで…。もともと焼き鳥屋さんをしていたこともあって、資金をためて店を再開するのよって頑張ってくださっています」。
 

事業が行き詰ったら、刺し子さん全員と話し合う。


事業が大きくなるにつれて問題になるのが資金や人手不足。そこで吉野さんはNGOテラ・ルネッサンスに採用してもらい、運営母体を移譲することに。それでもより多くの被災者を採用するには今の状態では厳しいと言います。特に吉野さんのような“まとめ役”の方の不足は深刻なのだとか。「なので今度“刺し子ミーティング”をするんです。90人の刺し子さんに声をかけて、現状を正直に話そうと思っています。本当に役に立っている事業なら、きっとみんな協力してくれますから」。

 

「ありがとね。孫にジュースを買ってあげられたよ」


ある刺し子さんに言われたこの言葉は、吉野さんの心に強く残っているそうです。「初めてのお給料でお孫さんにジュースを買ってあげられたと、本当に喜んでくださって。この言葉を聞いたとき刺し子をしてよかったなぁと思いました」。


「週に1度、集会所に集まるのが待ち遠しい」
と話してくれたおばあちゃん。


収入を得ることで、生活が安定したり、大切な人を喜ばせることができる。それはもちろんですが、“刺し子をする”という作業自体にも大きな意味があったようです。「避難所で“私は刺し子に救われた”と言ってくれた方がいたんです。その方は、避難所で何もしていないと色んな人に話かけられるので、それが負担になっていたみたいで。縫物をしている間は話しかけてくる人が少なく、それがよかったみたいですね」。
 
「刺し子に救われた」という言葉は、今回の取材で私もあるおばあちゃんから聞きました。隣に座った私に開口一番「私は刺し子に救われたんだよ」と話してくれたおばあちゃんは今回の震災でご主人を亡くされ、今は仮設住宅でひとり暮らし。「近所の方に誘ってもらって刺し子を始めたんです。仮設住宅だと本当にひとりぼっち。だからこうやって週に1度みんなで集まるのがとっても待ち遠しいの」。
 

「刺し子プロジェクトには、もうひとつ目的があるんです」


前列は刺し子さん。後列の取材班の間、
左から2番目が刺し子プロジェクトの
発案者である吉野和也さん。

被災地のために何をすべきか、ということを常に考えておられる吉野さん。「自分たちの資金・人員にも限りがあるので、どのようなプロジェクトを行うのかを決めるために、現地の人たちがどんな状況にあり、どんなニーズを持っているのかを把握するのはとても重要ですが、なかなかぼくたちの力だけでは限界があるんです。だから刺し子さんたちをアンテナにして、現地の方々がどんな状況にあるのか、何か変わったことはないかなど、ことあるごとに聞くようにして情報を集めているんです」。
被災地の現状にきちんと目を向ける。そしてそこで見えてきた“本当に必要な支援”をする。単純なようでなかなかできないこの2つのことを実行されたからこそ、刺し子プロジェクトは成功したのだと感じました。

この活動への
ご協力はこちら

こちらの団体/活動への支援、ご協力、ご連絡は、下記より直接お問い合わせくださいますようお願いいたします。

特定非営利活動法人 テラ・ルネッサンス
http://tomotsuna.jp/
プロジェクト名:大槌復興 刺し子プロジェクト
プロジェクト概要:
大槌で仕事を失った女性たちの支援を目的としたプロジェクト。布巾などに刺繍を施し、WEBサイトを通して販売。売上は、材料費などのコストを引き、作り手の女性たちに分配される。
財源:事業収入 寄付金 自己資金
平均的な月収*:5万円未満
従事者数:51名以上
*「平均的な月収」は概算であり、実際に被災者が受け取る収入には幅があります。

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