レポート・現地情報

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気仙沼復興協会(KRA)(後篇)
『港町の編みっ娘ぶらぐ』 ひと編みひと編みに、40年の想いを込めて。


「365日、筏の上で過ごしました」

 

松本和子さんは66歳、気仙沼生まれの気仙沼育ち。気仙沼で最上級の呉服店といわれる「山純」に勤めた縫い子の祖母を持つ。多数の弟子を持つなど、当時は地元でもかなり知られた縫い子さんだったという。そんな祖母の影響を受け、和子さんも中学卒業後、地元の和裁学校に5年間通ったというから、その技術はかなりのものである。

学校卒業後まもなく松本家に嫁ぐことになった和子さん。夫の稼業はワカメ・コンブ・カキなどの養殖業。気仙沼の代表的な産業の一つだが、海を相手にする仕事だけに激務である。朝の集荷に間に合わせるために、早い時で朝の2時ぐらいから作業が始まる。寒い冬の時期に、収穫したカキの殻を割って取り外すのは女たちの役目だ。収穫されたワカメも、メカブや茎に細かく分けて集荷に備えられる。

「ほぼ365日、筏の上で過ごしました」と和子さん。それまで針と糸を自在に操っていたその手は、いつしかロープや網を持つ手に変わり、夫と家計を支えるために全力で働く日々。「娘のために裁縫や編み物をしたい気持ちはあったけど、そんな時間はほとんどありませんでした。ただ、ひたすら、海の仕事をする。そんな生活が40年続いたんです。」その間、娘は結婚し別の家庭を築くことになる。実はその娘というのが、前回のレポートでも紹介した、気仙沼復興協会の事務を担う小松朋子さんなのである。
 

 

「娘に編んであげよう」―40年越しの想いが事業のきっかけに。

 

和子さんの生活は、3月11日の大津波で激変した。尾崎地区にあった自宅は津波で流失し、現在は実母の敷地内に仮の住宅を建てて暮らしている。幸い夫も無事だったが、筏をはじめ養殖業を営むために必要なものはすべて失われてしまった。現在も夫は漁業組合で養殖再開に向けて懸命の努力を続けているが、十分な見通しは立っていない。
和子さん自身も地震の後大変な日々を送った。幸いにして津波の難を逃れた実家に居候するも、電気も水道もない生活。実家が残っているというだけで、避難所に物資を貰いに行くことすらも遠慮しないといけない。そんな極限の中で、隣町まで水を汲みにいったり、わずかな畑を耕したりなど、忙しく過ごしてきた。
 

朋子さんが身に着けたマフラー。
これを見たKRAスタッフの発案で
編み物支援がスタートしたとのこと。

ようやく生活が落ち着きを取り戻した頃、和子さんが買い物に寄った「しまむら」で、3000円の毛糸のマフラーが陳列してあるのが目についた。和子さんは娘にマフラーを編もうと発起する。「このマフラー、糸代だけならたぶん千円ぐらいだし」と笑うが、「今まで娘に編んであげられなかったから、この機会に」という言葉がむしろ本音だろう。

和子さんが作ったマフラーを見せてもらった。編み物には詳しくないが、素人仕事でないことは一目瞭然だ。一つ一つの編み目が細かく、しかも正確である。「だけどすごく早いんだあ。何かに憑りつかれた様に、無心で編んでっから」と朋子さん。何しろ40年間封印してきた編み物だ。彼女はひと編みひと編みで、その空白の日々を埋めようとしているのかもしれない。

 

取材中のやり取りで笑う和子さん。

もちろん、漁師の妻としての時間が不幸だったわけでは決してない。海への愛着も、生業を失ったことへの喪失感も、おそらく言葉にならないぐらいだろう。でも彼女はそのことで絶望することなく、自分がやりたかったこと、やれることを新たなしごとの中に見出している。

「あの震災は、もちろんつらいことだったけど、悪いことばかりではないと思う。こうやって好きな編み物をして、喜んで貰っていってくれる人がいるんだもんね。」
 
和子さんはそう笑った。心から嬉しそうな笑顔だった。


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気仙沼復興協会には、他にも5名ほどの編み手がいます。(編み手の紹介ページはこちら)。それぞれがそれぞれの人生を重ねて、今日も編み物を続けているそうです。いずれも規格品ではなく、大量に生産できるものでもありませんが、彼女たちが思い思いに作った作品は、気仙沼復興協会のホームページに紹介されており、ちらで購入することができます。一人でも多くの人が、彼女たちの想いを編み物を通じて共有してくれたら、それは彼女たちにとってこれからを生きる勇気になると思います。

この活動への
ご協力はこちら

こちらの団体/活動への支援、ご協力、ご連絡は、下記より直接お問い合わせくださいますようお願いいたします。

一般社団法人 気仙沼復興協会(KRA)
プロジェクト名:「港町の編みっ娘ぶらぐ」
http://www5.hp-ez.com/hp/fucco-kra311/community

プロジェクト概要:
仮設住宅に暮らす女性たちが編み物を行い、それを販売することで収入にする。
財源:事業収入
平均的な月収*:5万円未満
従事者数:10名未満
*「平均的な月収」は概算であり、実際に被災者が受け取る収入には幅があります。

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